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今の日本には女性の力が必用。女性活躍のため、企業ができること

女性が働きやすい職場をつくるには。属人化した業務の標準化がカギに

平田 恵(タメニー株式会社(旧株式会社パートナーエージェント)広報担当。以下、平田)

平田

ここからは女性活躍を推進するため、企業にどんなことができるのか、考えていきたいと思います。

永井さんは富士ゼロックスでキャリアをスタートされて、その後、GEキャピタルリーシング、エルメスジャポンなどの外資系企業で活躍されてきました。これまでのご経験などから、日本企業と外資系企業、女性にとってどちらの職場の方が働きやすいと感じましたか?

永井 裕美子(株式会社LiB取締役副社長兼CPO。以下、永井)

永井

働きやすさの面でそれぞれ良さがあり、優劣は付けづらいですが、日本の職場では、女性だから配慮せねばという、日本のよさでもある慮った配慮が、結果として女性の力を活かしきれなくなることもあるのではと感じています。

「女性は、家事や育児があり、長期間、もしくは長時間働けないから」という理由で、女性に活躍の機会を与えることを躊躇する企業がまだまだ多くあるように思います。外資系企業は、もう少しドライな考え方で、時間の長さより成果を重視する傾向があるので、男女関係なく、また時間の長さではなくその仕事に適していると思う人を男女関係なく登用します。

今の日本には女性の力が必要ですし、優秀な女性もたくさんいらっしゃいます。企業側が、慮るがゆえに優秀な女性の力を十分活用しきれないとしたら、それはとてももったいないことだと思います。

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平田

女性にとってもっと働きやすい環境にするために、企業に必要なことはどんなことだとお考えですか?

永井

長時間労働から脱すること、そして、仕事を属人的なものにはせず、標準化していくことだと思います。
その人しかわからない仕事が多いと、その人が長時間その場にいることが求められます。
属人化するのではなくて、きちんと言語化・可視化して、他の社員でも対応できるようにしていけば、ある業務を1人の社員が背負い込むことはなくなり、さまざまな業務を複数の人でワークシェアリングしていく働き方が可能になっていくはずです。

30年前になりますが、アメリカで働いていたときに、一つの仕事を2名の女性が、週2.5日ずつ完全にシェアして仕事をしている様子を目の当たりにしました。
労働力不足の今、日本でも、こうしたことができるようになれば、全体の雇用力も上がるし、女性の活躍も進むのではと思います。

平田

ワークシェアリングが可能になれば、育児などで忙しい女性にとっても働きやすい環境が整っていきそうですね。

キャリアを大事にしたくても――結婚・出産を選んだ女性が失う10年

平田

森本さんは、人材採用・活用の最前線で長く活躍していらっしゃいます。森本さんから見て、女性の働き方はどのように変化してきていると思いますか?

森本 千賀子(株式会社morich 代表取締役社長。以下、森本)

森本

日本の労働人口が減っていく中で、行政も企業も「どうやって女性に活躍してもらうか」という点に意識を傾けるようになりました。女性活躍に必要な政策や人事制度を立案したり、研修をしたりといった取り組みが盛んになってきていますよね。
そうした取り組みが進んできたことで、実際に、結婚・出産を理由に退職する人は減りました。私自身の実感ですが、高校1年生の長男が小学生だったころ、保護者会に参加すると専業主婦のお母さま方が圧倒的に多かったんです。でも今、小学5年生の次男の保護者会に行くと、多くのお母さまが働いているんですよね。やはり女性が働き続けるのが当たり前の世の中になってきていると感じます。

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ただ、共働きが当たり前になってきてはいても、ほとんどの家庭で家事・育児の最終的な責任を負うことになり、出産後に短時間勤務制度を利用することになるのは女性です。結婚・出産する女性は、自分のキャリアを大事にしたくても、フルタイムで働く男性と比べると、明らかにチャンスが限られてしまうんです。

時短制度を使うことを否定しませんが、日本の社会においては時短勤務という働き方を選ぶと、さまざまな制約が発生してしまいます。その結果、企業が重要なプロジェクトを誰に任せるか決めるとき、「あの人に任せたいけれども、今は時短勤務中だからやめておこう」となってしまうことが多いんです。

一般的な企業なら、子どもが小学3年生前後になるまで、つまり約10年にわたって時短で働けるようにしています。ただしその10年間、働き続けることはできても、チャンスは滅多にやってきません。キャリアを大切にしたい女性にとって、出産後に時短で働く10年間は、非常にもったいない期間になってしまっています。

企業がまずやるべきこと。女性が働きやすいように、“働き方の選択肢”を増やそう

平田

女性が育児をしながらキャリアを磨いていけるような環境を、企業が積極的に整えていく必要がありますね。

女性が働きやすい環境を整えるため、企業側はどんな対応を進めるべきでしょうか。

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永井

私が副社長を務めているLiBは、女性向けのライフキャリア支援サービスを事業としています。女性を支えるLiB自体も、多様な働き方を実践できる職場でなければなりませんから、様々な働き方の選択肢を増やすチャレンジをしています。

たとえば、LiBには、正社員で週4日勤務の社員もいます。その社員は、パートナーが転勤となったため、金曜日を休みにして金土日の3日間、パートナーの赴任先に通えるようにしています。また、フルリモートで働く社員もいます。
今後は、LiBのこうした取り組みを発信していくことで、仕事と家庭を両立したい女性が働きやすい職場について、企業に考えてもらうきっかけにしていきたいです。企業の中には、採用検討中の女性が育児中だったら「時短勤務でもちゃんと業務は回るのだろうか?」と不安を持つ場合もあると思います。そうした不安から女性の採用に積極的になれない企業を、少しでも減らしていきたいと考えています。

また女性活躍のためには、男性がもっと家事・育児を受け持てるようになっていくことも欠かせません。ですからLiBでは、男性社員にもフレックス制度や、リモートワーク制度を積極的に利用してもらっています。通勤には時間がかかるし、通勤するだけで疲れてしまいますよね。通勤する分の時間を家事や育児に充てて、週2日は完全にリモートワークをしている男性社員もいます。

まだいろいろと試行錯誤の段階ですが、昔と比べて今は便利なツールがたくさんあります。チャットツールを使ってより気軽に、より円滑にコミュニケーションが取れるようになりましたし、リモートワーク中の社員ともPCの画面を共有して会議をすることもできます。今の時代なら工夫次第で、いくらでも働き方を変えられるのではないでしょうか。

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