「婚活」誕生から10年、”産みの母”が語る変わったこと/変えられなかったこと
恋愛が「面倒くさい」若者世代、“承認”と“炎上”が行動を縛る
森本 千賀子(以下、森本)
- 森本
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若い世代を見ていると、バブル世代などと比較して、結婚する以前に恋愛経験が少ない人が多いように感じます。「もう一歩、踏み込むべきだろうか」「こういうときは、どう駆け引きしたらいいの?」と悩んでしまって、最終的には自分が傷つくことを恐れて行動しない人が増えていますよね。
- 白河
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近著『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』で大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)」を題材として取り上げ、結婚というものを因数分解してみるという試みをしてみました。
「逃げ恥」を見ていて「現在を的確に捉えているな」と感じたのは、高学歴・高収入なのに恋愛経験ゼロの男性が主人公だということです。国立社会保障・人口問題研究所が2015年に実施した「第15回出生動向基本調査」では、30~34歳未婚男性の25.6%は性経験がないと回答しています。
どんなことでも経験がないと、なかなか積極的にはなれません。婚活や恋愛については、その傾向はさらに強くなると思います。
- 森本
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経験の有無は大きいですよね。経験がないと恋愛を怖く感じてもおかしくない気がします。
- 白河
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若い世代が複雑なのは、「恋愛はしたくないけれど結婚はしたい」と考えているところです。恋愛が「怖い」という感情の他に、「面倒くさい」という感情も強く持っているようです。
実際、内閣府の「平成26年度 結婚・家族形成に関する意識調査」で、「現在恋人が欲しいと思わない」と答えた20~30代の男女にその理由を聞いてみたところ、「恋愛が面倒」(46.2%)、「自分の趣味に力を入れたい」(45.1%)、「仕事や勉強に力を入れたい」(32.9%)といった回答が上位に並びました。
「今は勉強や仕事、趣味に専念したい。でも、いつかは結婚したい。結婚するためには、面倒くさいけれど、どこかで恋愛を経験しないといけない」と思っているところが興味深いです。 - 森本
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確かに、誰かと関わることを「面倒くさい」と感じる若者が増えているのか、ある大学が調査したところ、サークルや部活動に所属する若者が減ってきていることが分かったそうです。
普通の人間関係でさえ「面倒くさい」と感じていたら、恋愛なんかもっと「面倒くさい」でしょうね。
- 白河
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サークルで築いた人間関係を、恋愛で乱してはいけないと考える若者もいます。いわゆる「空気を読む」というものですね。女子大生に「男性とはどこで出会えばいいのでしょうか」と相談を受けたことがあるのですが、「他大学の男性も参加するサークルに入ってみたら?」と勧めたところ、「もうサッカーサークルに入っています」と。「それなら、何でその中で彼氏をつくらないの?」と聞いてみたら、「サークルはサッカーをするところですから」という答えが返ってきて、「何だ、この妙な生真面目さは」と思いましたね(笑)。
- 森本
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昔はサークル内で恋愛して、三角関係になることとか、よくありましたよね。
- 白河
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それが今の時代、サークル内でカップルになることは和を乱すリスクにもなる。またLINEで告白しても、写メで他の人に公開されたら……。そんなことを考えると、恋愛するのに、すごく勇気が必要な時代になってしまったなと思います。
- 佐藤
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10代の女性をターゲットにしたファッションブランドのマーケティングを手掛ける知人がいるのですが、まさに今の10代はLINEなどのSNSでみんなつながっていて、“承認”と“炎上”が彼/彼女らの行動を縛っていると言っていました。
例えば、10代の女性が冬のコートを買ったことをSNSで報告するときに「好きなブランドのコートを買った」と言わないそうなんです。なぜなら、「そのブランドのコートはダサいよね」と友達にコメントされたくないから。嫌われて“炎上”することを恐れているわけです。
その代わりに、ZOZOTOWNのファッションコーディネートアプリ「WEAR」でおすすめされていたコートを買ったと投稿するんですよね。そうすると、SNSで“承認”されやすくなるそうです。
誰かのレコメンデーションに従って、誰にも嫌われず、輪を乱さない行動をしたい。今の10代は強くそれを望んでいるという話でした。 - 白河
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この間、女子大生が「人工知能(AI)に結婚相手を選んでほしい」と言っていました。AIのアルゴリズムで、自分の行動を最適化してほしいそうです(笑)。
- 森本
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AIの方が、安心感があるんですかね(笑)。
- 佐藤
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「AIの仲人さんが薦めてくれた人と、今度結婚するんです」といったことが、近い将来、現実に起きることになるかもしれませんね。
- 白河 桃子(しらかわ とうこ)少子化ジャーナリスト・作家、相模女子大学客員教授、昭和女子大学総合教育センター客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。
- 慶應義塾大学文学部社会学専攻卒。住友商事、リーマン・ブラザーズを経て、ジャーナリスト・作家として独立。2008年に中央大学の山田昌弘教授と共同執筆した『「婚活」時代』をきっかけとして、「婚活」はユーキャン新語・流行語大賞に2年連続でノミネート。「婚活」という概念が、社会で広く認知されるようになった。
主な著書は『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』(PHP新書)、『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(毎日新聞出版)『後悔しない「産む」X「働く」』(ポプラ新書)など。
- 森本 千賀子(もりもと ちかこ)株式会社morich代表取締役、オールラウンダーエージェント。
- 獨協大学外国語学部英語学科卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。転職エージェントとして、人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、2000人超の転職に携わる。設立以来の累計売上実績は社内トップ、リクルート社内表彰・主要賞の受賞回数は30回超にも及ぶ。
プライベートでは毎朝3時に起床し、自分の時間を確保しながら、現在中二と小三の2男の母として育児を楽しむ。
主な著書に『No.1営業ウーマンの「朝3時起き」でトリプルハッピーに生きる本』(幻冬舎)など。
- 佐藤 茂(さとう しげる)タメニー株式会社(旧株式会社パートナーエージェント)代表取締役社長。
- 駒澤大学経営学部在学時から広告代理店・株式会社オプトでアルバイトとして働き、卒業後に入社。大手結婚相談所へ転職し、マーケティング担当取締役として広告戦略等を担当する。その後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに入社。結婚情報サービス事業を手掛ける子会社として旧株式会社パートナーエージェントを立ち上げ、2008年にMEBOによって親会社から独立。2015年、東証マザーズへ上場を果たす。
現在、パートナーエージェントの会員数は約1万2000名、婚活支援サービス業界で成婚率No.1を誇る。